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明治32年春場所千秋楽 (朝日新聞/明治32.1.20)

○回向院大相撲
・昨十九日(十日目)幕下力士が出世の関ヶ原とて好角家はかえって早朝より観物に赴き、相応の入りを占めたり。
照日山野州山は、苦なく突き出して野州の勝。
立嵐大戸川は、素首落としでの勝。
朝日龍八ツ若は、の二本に拘わらず首投げにての勝。
嵐山緑島は、右差しにて寄り切りの勝。
最上山朝日嶽は相四ツにて釣り合い、釣っての勝。
荒鷲小武蔵は、左相四ツにて釣れば小武足癖にて防ぎ、勝負付かずして引分。
玉ヶ崎は、勢い引落しとの左を取るや反対に引落されての負け。
錦山岩ノ森は、引落しての勝。
梅錦熊ヶ嶽は、左を取って一本に行きしが潰れての負け。
荒雲大嶽は、左四つにては内掛にて巻き倒さんとするを、切っ返しての勝。
栄鶴淀川は、の左筈を撓めて揉み合いの左差しにて挑みし時の横腹の腫物より出血して分となる。
宮ノ浦緑川は、右相四つにて挑み勝負付かずして引分。
鶴ノ音金山は、突き合い突き出しての勝。
鬼竜山は、出鼻をハタキたるが潜って抜けたるよりの腰砕けて負。
谷ノ川高見山は、左四ツにてアセッテ押詰めもたれて潰さんとせしよりはウッチャリて勝を占む。
・(中入後)梅ノ矢平岩の左差しをは引掛け投げを打ちたるより踏み切っての勝。
千田川磯千鳥は、のハタキを引き外し潜って左外枠に取って押し出しの勝。
駒勇尼ヶ崎は、のハタキ残しては右を差し捻っての勝。
橋立小西川は、の左差しを引掛け左に敵の右足を取り、渡し込んでの勝。
有明浪花崎は、突張って浪花の勝。
國見山成瀬川、右四ツ下手にての勝。
・(是より三役)鳴門龍高千穂は突き合い左差しの寄りにて鳴門の勝。
淡路洋利根川は、突き出しての勝は呆気なし。
松ノ風八剣は左四ツの釣りにて八剣の勝ち、弓取は霧島代理して目出たく千秋楽となりたり。

○力士にくまれ評
・十日間の大場所、観客の種類は官吏や商人や書生や職人や農夫や婦人もあれば子供もある、そのにくまれ口を手帳に書き留め置きたればここに少しく掲ぐる事としぬ、人として一の癖はあるものよ力士にもまた短所あり欠点あり、贔屓の人々怒り給いそ。
・山田君常陸山の力量は凄まじいもんぢゃね、立上がって左四ツとなって投を打ったで梅ノ谷の体が斜になったのを再び投を打って相手の体の浮いたのをそのまま寄って勝を占むるに至った技倆の如きは実に神出鬼没ちうても可ぢゃで、しかれどもぢゃ彼は近来大いに慢心しちょるね、軽敵にも土俵を譲って見せたり或いは何処からでも来いちうような風を示すのはいかにも小面憎く見えるぢゃないか、これが大関横綱の資格でもあれば格別ぢゃが彼常陸の如きはいまだ全く声望の相添わざる分際でもって生効きぢゃわい、君の意見は如何ぢゃ。
・やれやれどえらいもんぢゃにゃあかい、あれが梅ノ谷関や、我が村の鎮守様の仁王どんよりも大かんべいが人は外観によらにゃあもんだぞ、何故ちうと見い、あの関は相手の隙さあ見つけるとすぐに立上がって勝とうとするぢゃにゃあかい、あれがハア三役のお相撲に出来る事かい、アレ誰ぢゃ汝かいみかんの皮さあ我に投げつけたのは、効かぬぞ効かぬぞ茶枯者め。
・ちょいとあなた朝汐さんは卑怯です事ねえ、いつでも待ったを何回もして相手が怒って武者振りついてくると自分から負ける事があるんですよ、オヤオヤご覧なさいよ本年は余程直しましたねえ嬉しい。
・如何でげす横綱の小錦は例に依って例の如く小量でげすね、不侫は至極贔屓に致して居りやすがあの男の取口がな実にどうもこう軽率でげして一時に敵を倒そうと致しやすからいつでも不覚を取りやす、もう少し泰然自若と致しておりやせんと第一大関の貫目にも関係しやす、彼もな風の噂に聞きますると何とやら申す女部屋の養子とかに相なるそうで相撲道の熱心が薄らいだと申します、惜しいもんぢゃあげえせんか養子なぞは「ヨウシ」にしたらよいでしょうにス。
・へん可笑しく無愛嬌の力士ぢゃねえかい大砲だか電報だか知らねえが余り早過ぎて呆気なくって面白え事も何ともありゃあしねえ、立ち端に二本を突き出してよ取り組むとすぐに分けを待つのがちゃんと御面相に見えすいていやあがる、人をつッけ馬鹿馬鹿しいせめて二三度くらい仕掛けろよ関脇なら、もし言う事を聞かなけれりゃあこのお兄ィさんが承加しねえぞ野郎め。
・わたし海山が贔屓よ、あの人は土佐の江野口の生まれよ、元は大阪にいたのですが板垣伯に勧められて東京に来たのですとさ、好力士だけれどもねお酒が好きだから困るわ、今日も御覧なさいよ晴れの場だというに酩酊してるでしょう、ワインなんかを飲んで土俵へ出てはいけないのね、勝とうと思ったってイムポシブルよ。
大蛇潟玉ノ井に至っては僕は甚だその意を得んぞ、その場に入るや必ず待ったの十数回を行いよる、いやしくも人気の衰頽を挽回せんと欲せば須らくこの悪癖を除去すべしだチェストー!
小松山は高慢くさい顔をしてきっと四方を見回すがの、あれは宜しくない癖ぢゃの、貴公何と思う。
若湊にも悪い癖がありますね、もう叶わぬと思うと力を抜いてしまいますが負けるまで耐えていたらいかがなものでしょうか。
・お父さん僕は横車は嫌いさ、四ツ身になると相手の肩の上へ顎を載せてニコニコ笑うよ、何だか相手を軽蔑しているように見えるねえ、そのくせあんまり勝ちもしないよ。
・もしお隣席の御隠居さん、わたしはこの通り歯も抜けて本年七十になりますが高ノ戸のような妙な力士は御座いましぇんね、たとい正面では誰にも叶わぬしぇよ自分から跳ね出て負けるのは可笑しう御座いましゅねハハハ。
・吾輩は小説の材料にもと参考に来観したのである、力士両三名の批評を試みる事はあえて無益の業であるまいと思う、不知火は仕事は巧みだが立ちが悪い、また勝手が悪いとごまかして待ったをいうが幕の行いとしては不似合いである、谷ノ音は仕切り方は隨一だが敵に寄られて詰め間近くなると渡って防ぐ事は容易にせず自ら力を抜く事がある、幕下では八剣は怒りっぽい、谷ノ川はノンキ、松ノ風は壺口目バタキ、鶴ノ音はニヤニヤ笑う、國見山は遊び相撲、は上目を使う、一人も理想に合うは無いのである。
○好角同士会の相撲
・再三再四記載したる同会の興行相撲はいよいよ今日よりの前橋と及び横浜を打ち上げたるのち来月十日初日回向院に於て五日間興行する事となりたるが、未だ力士との交渉まちまちにて中には不平の連中もあれば、ことによると東西分離して西方が三日間取れば東方が二日間取るようになるやも知れずという。

千秋楽は十両以下だけの取組、こんな日でも相撲マニアは明日の花形力士を見つけるために続々と集まってきます。鬼竜山・八剣・高見山が勝ってそれぞれ7勝目。今場所は十両上位が揃って好成績のため誰が昇進できるか予測が難しいです。逆に幕内下位で大負けした稲瀬川・鬼鹿毛あたりは最近の傾向から十両陥落を覚悟しなければなりません。記事の方は、にくまれ評として色々な庶民が好き勝手に批評しています(;・ω・)当時の観客の様子が少し垣間見れて面白いです。最後の作家の人はずいぶん難癖をつけてくれていますが、もし双葉山がこの時代にいれば、理想の力士と言われたかも知れませんね。

明治32年春場所星取表
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テーマ:大相撲 - ジャンル:スポーツ

【2013/05/20 01:09】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
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