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中村楼事件 その2(東京朝日新聞/明治29.1.15)

○大相撲紛議一條
・前号にその詳細を報道したる回向院大相撲の紛議一條は、一昨日午後に至り多くの仲裁者が八方奔走の末取締高砂及び検査役阿武松武蔵川浦風関ノ戸八角尾車伊勢ノ海清見潟、勧進元二所ノ関の人々を角觝協会へ集合せしめ、敵味方打ち解けて善後策を攻究する事になりし折柄、西方の大関大戸平をはじめ大砲海山鳳凰谷ノ音小松山などいう西方幕の内の力士ども一同連署にて休業届けを出したれば、かくては折角我々どもが和睦を結んでも相撲興行覚束なければ、兎も角一旦今度の興行は休止する事になし、西方の力士を慰撫したる後ち更に計画を立つるにしくなしとてまづ焚き出し(興行中力士及び関係人一同の糧食を焚出す所)を引揚げさせ次に検査役八名辞表をしたため、さて一同まさに引取らんとする所へ、あたかも好し先に仲裁を依頼せられたる署長室田景辰、区長飯島保篤、好角家伊志田友方の三氏より年寄一同へ宛てたる書面到来し「回向院大相撲休業する時は将来斯道のために大いなる不利益を来たすべし、よって我々三名及ばずながら仲裁の労を執らんとす、幸い本所警察署内の撃剣場は多人数を容るるに適当なるを以て年寄及び主なる力士一同を同所へ招集して熟議を遂ぐるあらんとす、請い願わくは本日午後五時までに一同集合するよう取計らわれたし」とありけるより、一同ひとまづ辞職を見合せ更に一同より力士仲間へ右集会の通知を発すべき事となりしに、東の方は大半高砂の部屋のみゆえ速やかに高砂より通知を為したれども、西の方はその部屋数派に分かれいることなれば一時に容易く通知を為す能わず、如何はせんと心配しおりしに、是より先西方の力士は大関大戸平をはじめとし以下の面々続々として相撲茶屋武蔵屋方へ寄り集まり、即ち大戸平を議長として協議の末もし此の後取締検査役等が専断を以て西の力士を東へ廻すことあらば一同誓ってその廻されたる力士と決して取組まざる事に盟約を定め、なおまた再び西の力士を一人たりとも東へ廻さんとの議起こりし時は一同袂を連ねて休業せんとの事を決したり、この時年寄仲間にては初めて西方力士一同が武蔵屋にいる事を知り仲裁者の書面に正副取締の添書を付し西方力士のおる所へ持たせたれば、一同は「本日午後五時までに警察署へ参集すべし」とある警察署の三字を見て震え上がり別に悪い事をした覚えはないが、それとも何かお眼玉を頂戴する事があるのかと半信半疑、決する能わず六尺豊かの大の男子もお官の御威勢には叶わぬと見え歯の根の合わぬ手合もありしが、ナニまさか罪のない者を縛れくくれとも仰しゃるまいビクビクせずに出掛けたがよかろう、しかしマァこういう時は酒の事だと冷酒の仰っ切りに勢いをつけモウこれで千人力だと午後五時二十分頃より一同揃って出頭せり。
・此の時年寄連中及び東の力士一同は既に警察署内に居流れており、いよいよ顔揃いになりしかば仲裁人たる室田、飯島、伊志田の三氏は一同に向い代るがわる口を開き、僅かの事より紛議を起し相撲興行中止になりてはただに一同の恥のみならず元来回向院の相撲場は学校敷地三丁以内の区域にありて興行許可になり難き所なるを、古来全国に鳴り響きたる東京名所の一つなりというを口実にし僅かに警視庁より許可せられおる次第なれば、今もし角觝仲間分離して二派に分かるる事などあらばたちまち警視庁より興行場を他へ移転せしめらるるは知れた事、それのみならず年寄七十余名のうち弟子を有するは僅かに二十三四名に過ぎず、その他はみな回向院大相撲二季の上がり高によって生活を為す者のみなれば、一朝興行中止とならば是等の者の不幸幾ばくぞやと縷々数百言理非を糺して説諭せり、これに依り年寄仲間及び東の力士一同は直ちに承服の意を示したれども、独り西の大関大戸平(即ち西の力士の代表者)は肯んぜずして曰く、今回の如く西の力士をみだりに東へ廻されては我等更に張合なし、依て御説諭には従い難しと、ここに於いて正副頭取は大戸平に向い(副頭取高砂の敵方なりしも此の時は既に仲裁者の意見に従い和睦せし後と知るべし)それは毎度いう如く東の幕内には病気引籠もりの者六名(西ノ海千歳川響升若湊天津風外ノ海)ありてとても西方と拮抗し難きよりやむを得ずその権衡を保たん為め西方の力士を東方へ廻したるなり、是とても我々が私意を挟むにはあらず、みな相撲の取組を面白くして斯道の隆盛を謀らんとするにあれば、ここの道埋をよく合点せられよと諭したれども、大戸平は此の時充分酒気を帯びたる故にや中々此の説諭に承服せず、よって一同は大戸平の酒気醒むるを待って再び説諭を試みんというに決し、やがて散会を告げたるは同夜九時過ぎのことなりき。
・かくて昨日午前十時に至り再び大戸平を警察署より呼出したれども容易に出頭せず、正午頃ようやく出頭したり、よって直ちに説諭を加えたれども、自分は西の大関をこそすれ関脇以下の力士を左右するほどの権利なければなおよく一同とも協議のうえ後刻返答すべしとて引取りたり、是にて力士の方は多分円滑にまとまるべき見込あるも、年寄仲間の方は表面こそ直ちに和睦したれ裏面なお種々なる事情の纒綿しおるものあれば、これが中々難物なるべしというものあり、しかし是さえ昨夜の内にうまく行けば今日にも太鼓を廻し直ぐに返り初日を出すべし、なお後談は怠りなく報道すべし。

続報です。西方力士の多くは鳳凰に同意して結束しているようです。年寄連は本場所が開催できないことによる損失のことも考えてか解決に前向き。警察署長の計らいで会合が持たれましたが、大戸平は飲酒をして出席(;・ω・)このあたりは昔の力士という感じですね。まとまりそうな話でしたが結論は先延ばしとなりました。ちなみに登場する飯島区長という人は後に銀行の要職につき、国技館新築のための資金を工面してくれたりと相撲界に縁の深い人物です。
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テーマ:大相撲 - ジャンル:スポーツ

【2008/06/09 00:46】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
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