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明治31年夏場所千秋楽 (朝日新聞/明治31.5.26)

○回向院大相撲
・昨二十五日(十日目)は早朝より好天気のため相応の大入にて、目出度く千秋楽となれり。
岩ノ森梅ノ矢は、の内掛を耐えつつ廻り込んで釣出しの勝。
若狭川照日山は、下手に入りて押切らんと進むを引落しての勝。
磯千鳥朝日龍は、突き合いのハタキを残したるが、突きにての勝。
境嶽西郷は、西の左を手繰り泉川にて撓め出しの勝。
淡路洋司天龍は突き合い突張っての勝。
栄鶴八剣は、右四つにて挑みすでに土俵を割らんとするを廻り込み、釣出しての勝。
鬼竜山松ノ風は当日の好取組にて初めて拍手の音も聞こえしが、立ち鼻をハタキたるを残して押し切らんとするより、は寄りながらに釣りたれど右足を掛け仕返しての勝は綺麗。
小武蔵利根川は、突合い素早く頭捻りに行くを残され、すぐ突き付けての勝は見事なり。
嶽ノ越緑川は、差しの押合いの足すべり踏切っての負け。
稲瀬川常陸山は、脇ミツと前袋を引きは閂に絞り、解れて右上手を引きて挑みしが、はあくまで歩を譲りあえて仕掛けず、水入後引分はの愛嬌を賞せざるなかりき。
・中入後、朝日嶽高千穂の左差しをは巻き左筈にて挑み、解れて左四ツとなりすぐは寄切ったり。
・是より三役、成瀬川岩戸川突き合い突き出しての勝。
國見山谷ノ川は烈しく突き合いは二三度張っての出鼻をハタキ込んでの勝。
鶴ノ音は、右四ツより右を差せばは二本に脇ミツを引きて挑みしが、遂に相四ツとなり互いに仕掛けも出来ず、水入後取り疲れ引分にて千秋楽となりぬ。

○力士放駒の末路
・今を去ること四十年前、江戸相撲の幕下三枚目に放駒と呼ぶ力士ありし、静岡県岡部宿出生にて本名を小畑徳次郎(本年六十九歳)と云い、一時は場所の人気取り相応に腕を鳴らせし男なれど、誰にも大敵なる年の関と顔合せ一年毎に敗が込んで維新の後は土俵を去り、全く素人の身となりたり。
・さて放駒の昔仲間の力士と連れ立ちては吉原の廓通いにいつも立寄りたる田町の引手茶屋某方におまさ(本年六十七歳)と云う娘あり、放駒の徳次郎が力士気質のさっぱりしたるに思いを掛けついに二人は夫婦となり、おまさは別に一軒の引手茶屋を開業し、共稼ぎに日を暮らすうち、放駒は力士をやめ夫婦の間には長男寅蔵(二十)長女おふくの子供も出来て、追々暮らし向きも骨の折れるに詮方なく引手茶屋をも廃業し、寅蔵は或る人の世話にて浅草西仲町の足袋屋某方へ奉公に住込ませ、おふくには因果を含めて吉原江戸町の芸者屋山田屋へ芸者に売り、その金にて夫婦は江戸町へどぜう屋を開き最初はすこぶる繁昌し、またおふくも名を小福と呼びて見番の流行妓となり月々いくらかの小遣い銭をも送り越したれば、徳次郎おまさの夫婦もホット安堵し暫らく息をつきたるが、不幸にも小福は八年前二十一歳の花の盛りを病気のために折り去られあの世へ出稼ぎする身となり、且つどぜう屋の店も次第に衰えそれこれにて店を畳み、ひとまず同区金龍山下瓦町二十一番地の長屋を借りて侘び住まい、他日の運を待つ甲斐もなく貧しさはいとど募りて弱り目に祟り目とやら、徳次郎は昨年の暮より病気となり、とる年の元気もなければ昔の面影もさらに残らず、姿は同じやつれ果てたる女房おまさが朝夕の介抱その隙には煙草の葉巻きを内職として僅かの賃銭に辛くも南京米の粥をすすり露の命を繋ぎ居れり、かかる中にてせがれ寅蔵の不埓なる早くも主家の足袋屋を飛出し勝手次第に諸所をうろつき、その身は麻布三連隊の後備兵なりしかば、二十七八年の役に従軍したる功により一時賜金二十五円の恩賞に預かりながら親元へは一文の送金もせず、みな遊興の資に遣い捨て目下は朦朧車夫の群に入り賭博と遊興にふけるのみか貧しき両親を脅しては只一枚の衣類さえ奪い去って金にする不孝無道の悪行に、父はもとより母のおまさは涙に暮れ、昨朝その筋に出頭しせがれ寅蔵への説諭を願い出でしとは昔に替わる夫婦が落ち目気の毒と云うも愚かなり。

千秋楽は十両までの取組ですが有望力士も多く出ており客入りは良かったようです。常陸山はここまで9日間で幕内8人を含む全員を倒して9連勝、千秋楽は十両の稲瀬川戦ですから楽に勝てそうでありますが、仕掛けず引き分け。千秋楽なので遊んだということなのでしょうが、愛嬌があるとして観客から賞賛されています。現在なら無気力と言われるか八百長と言われるか、このあたりは時代とともに相撲の見方も変わるということです。全勝という快挙をいとも簡単に手放してしまうあたり、大物ぶりを示していると思えます。國見山もこれより三役で結び前に登場して快勝、来場所は番付を上げてくるでしょう。記事の方はある元力士の老後の話で、娘が早逝して息子は親不孝、貧しく暮らしている夫婦とのことであまり楽しくありません(;・ω・)

明治31年夏場所星取表
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【2013/01/31 08:52】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
明治31年夏場所九日目 (朝日新聞/明治31.5.25)

○回向院大相撲
・昨二十四日(九日目)は朝来の曇天にて、前日の大入に引かえ客足なかりしが、好角家は相変わらず来観せるも多し。
大戸川嵐山は、内無双にて渡し込み大戸勝。
緑川錦山は、いまだ土付かずの二本差しを片閂に絞りて寄倒したり。
鉞り磯千鳥は、立ち鼻を張ったるもは屈せず、左を差し右上手に取って寄倒しての勝。
岩戸川立嵐は、の左差しを立は巻き左は殺し合いて暫し挑みしが、やがての小手投げ決まりての負け。
高千穂有明は、左四ツにて投げを打ちしも効かず、かえって寄切られての負け。
國見山松ノ風は幕下の好取組、右四ツより左四ツとなり一度投げを試みは釣り身に行くも相手は体に伸びありて効かず、少時揉み合いしが遂にの上手投げ見事に決まりての勝は大相撲にてありし。
成瀬川鳴門龍は、突合い左を取って引落しの勝は大出来。
利根川は、突き合い突き倒しての勝。
谷ノ川小天龍は、突出しの勝は一字を記す時間もなし。
岩木野稲瀬川は左四つにて挑み、やがては右を抜きて首に巻き内掛にて巻き倒しの勝は綺麗。
北海一力は突き合いの張り手には苛立ちて、すきなく突き出し左を差し込みすぐ寄り切っての勝。
響升鶴ヶ濱は、今日の足取り早き各勝負の中にてこの一番はの待った数回との待った数回都合合わして十二三遍のマッタにてようやく立ち上り、右より左四つに変じまたは左筈に右を差し一寸足癖に行きたるも、の耐えには効かずして早くも左差しにて押切るを、棄て身にに団扇の上がりしが、棄て身の決まりし時は早やに体がなきとて預りとなり、星は五分五分。
黒岩谷ノ音は、立ち上りがったり相四ツとなるやは得意の釣り身に行きての体一尺程地を離れしが、此方も得意の登り掛けには具合よく直に右内掛けにて巻倒しの勝は得意の鉢合せにて面白し。
源氏山小松山は左四ツより相四ツとなり、小松も大事に取るよと見えしがには劣りて振り出されしは是非もなし。
若湊荒岩サアコイと構える、もなんだと大喝一声ヨイショと怒鳴ればはブルブル取らぬ先から観客を笑わせしが、立ち上りはハタキたれど泳ぎて残し、出直す鼻を例の蹴手繰りにの両手砂に印す。
朝汐鳳凰は、立ち上り飛び違いにはたきて左四ツとなり、は右上手廻しを取りは二本を差して東溜の隅へ寄り切らんと進むに、も耐え得ず土俵の詰に三分を余したる実に危うき場合なりしが、の巧者はここにて左足をすくめて腰を廻したればは我が身の力にて寄倒れて敗を取りしは今日中の大相撲にてありし。
・中入後、小武蔵鶴ノ音の一本背負潰れての勝。

幕内最終日の九日目です。元関脇の谷ノ音は平幕に下がっていますが得意の足技は健在、元気な黒岩が吊りにくるところを内掛けで仕留めました。谷ノ音の足技はからみついて一緒に倒れこむ体勢になることが多いため預かりが多くなるのが特徴ですが、この日はきれいに決まりました。荒岩も勝って6勝目の好成績、大関級の実力がいよいよ発揮されて昇進も近いかという印象です。それにしても相手の気合に対して大袈裟に怖がるふりをして笑いを取るようなユーモアがあるとは意外でした。大関同士はいい勝負でしたが逆転で朝汐。この取組は中入り前の結びで、中入り後は幕下~幕内の残り半分が行われているのですが、紙面の欄外に掲載されていたため縮刷版では残念ながら読むことが出来ません。

明治31年夏場所星取表

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【2013/01/28 13:05】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
明治31年夏場所八日目 (朝日新聞/明治31.5.24)

○回向院大相撲
・昨二十三日(八日目)は欠勤力士のありしにも拘わらず大入にてありし。
朝日龍國見山は幕下有望の力士にて、が矢筈にて攻むればは引き外し左差しにて釣り出し、の勝。
今錦小武蔵は襷反りにての勝は喝采を得たり。
境嶽達ノ里の突きに一寸ひるみしが立て直し、寄って下手投にての勝は中々強し。
淡路洋岩ノ森は、烈しく突き合い淡路のハタキを危うく残し、すぐ付け入り左筈にて押切りての勝は御苦労。
尼ヶ崎八剣は、出鼻を張りたるもは飛び入り外無双にて渡し込まんとせしに、は逃げ身となりて左を差し掬っての勝。
鬼竜山鶴ノ音は、突張ると見せ耐えるをすかしてすぐ左を差し、下手投げ旨く決まりての勝。
成瀬川小西川は、左四ツにて小西より下手投げを打ちたるも、残りて寄るを小西すかさず腰投げを打ち、成瀬耐えてすでに同体に流れんとせし時、早くもは手をつきて小西の勝は興味薄し。
嶽ノ越荒鷲は、直ちに左を差し右上手を取るよと見る間に押切っての勝は当然。
一力玉風はまず相角力にて、右を手ぐって泉川に懸けしも解れて相四ツとなり、すぐにより釣り身に行きしも効かず土俵の中央に突立ちヨイショヨイショの掛声ばかりにて水となる、のち少しく揉みしばかりにて引分は無理ならず、観客より動くなの好評さえありし。
横車は、立ち上りすぐ左四つとなり、の釣を防ぎしも遂に釣られての勝。
天ツ風大纒は、天ツ大の左差しを撓めんとせしもしっかと取りて効かぬより、左四ツと右上手を引かんとするも、振って取らせず遂には右上手を引いて打ちたるも残ると見てもたれ込みの勝は大相撲。
當り矢大見崎は、突き合いは一寸ハタキて左四ツとなり、荒く揉みより上手投を打ちてまさにの危うかりしが早くも打ち返し、決まりて同体に流れ団扇は當りに上りしも物言い付きて預りは、双方怪我なく平となる。
梅ノ谷若湊は当日の呼び物にて、立ち上がり突きより手四ツとなりは張り手一番すぐ突きて透きなくもすでに危うく見えしが、の一杯に突き出したるを素早く体をかわせながらに引落し、の泳ぐを後ろより軽く突きて勝を占めしに、はその場を去らず残念に見えしは気の毒なりし。
谷ノ音逆鉾は、突き合いの左を手繰って泉川に行きしも、外れて右四ツより左四ツとなり、は寄せて足癖に行かんとすればは突張り体を伸ばして効かせず双方揉み合いて水となり、のち取り疲れて引分は面白味なく、観客冷評を下したり。
鳳凰増田川は初めての取組にて、立ち上りの左を取り例の泉川にての勝。

場所も大詰めの八日目となりました。千年川、鬼鹿毛、玉ノ井ら何人か平幕力士が休場しましたが、客入りに大きな影響は無いようです。前日に常陸山戦で奮闘した突っ張りのベテラン若湊は梅ノ谷戦。いい所まで攻めましたが、いなされて惜敗。かなり悔しかったようですが、拍手はたくさんもらえたことでしょう。新関脇の逆鉾はすでに5勝を挙げて勝ち越しを決めていますが、この日は足技の谷ノ音に苦戦して引き分け。河津掛けをこらえてしのぐなど面白そうな相撲に見えますが、少し物足りない内容だったでしょうか。大関鳳凰は得意の力技で5勝目、順当に勝ち越しました。

明治31年夏場所星取表

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【2013/01/24 23:22】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
明治31年夏場所七日目 (朝日新聞/明治31.5.23)

○回向院大相撲
・昨二十二日(七日目)は快晴に加えて日曜日なりしに貴顕紳士の来観ことに多く、桟敷は午前九時に売切れとなり正午頃には木戸も客止めとなりし好景気にてありし。
司天龍甲岩は、諸筈にて押すをは耐えて寄り返すを、透かさず押倒して司天の勝。
緑川栄鶴は、激しく突き合い右を差せば上手に巻きたるまま小競り合にて、仕掛けは損ぢゃと木偶となって引分。
鉞り有明は、立上り鉞りの左手を取って引掛ける、は外さんとして引くを任せて鉞りの勝なりしが、は土俵の詰にて捻りたれど鉞りに踏切りあるとに団扇を上げしが、物言いとなり検査員八角は踏切りなしと主張し、預となって星は平。
岩戸川御舟潟、この一番は取らずもがなとの悪評さえありしが、左を取りハタキて手繰り込み岩戸の勝は筆を労する価値なし。
高千穂磯千鳥は、右四ツにて左は殺し合い、は下手なれば仕掛れば仕掛も出来れどは体を落し居ればも体を伸ばして、互いに敵の仕掛を待ちたるまま取疲れ引分は興味なし。
利根川待乳山は、突かれながら飛び入り下手を取って頭捻りに行きしが、付け入られかえって踏切りありてに星を奪わる、元の勝平なれば粘りありて斯くは負けまじきに。
谷ノ川鳴門龍は、左四ツに渡り懐に入りて押し切らんとするを、が一寸逡巡したれば右足を運ぶ間なく足の流れを捻っての勝はの不覚なり。
岩木野一力は、突き合いはハタキでの腰砕けんとするを透かさず突きて一力の勝は瞬間の争いなりし。
鶴ヶ濱は、立ち上りは左差しにて強く引き寄せ右を当てて寄るより、流石のも手腕を伸ばす能わず力の入らずして敗を取りしは時の運と断念すべし。
増田川稲瀬川は、突きの一点にて突き勝ち土俵より出づ。
北海鬼鹿毛は此の社会の顧問官、は左を差し右筈にて強く寄れば耐える力なくしての勝は相角力。
大蛇潟小松山は、左四つより解れての左を片閂に絞りて寄るを、は詰めを渡して防ぎしが、寄り倒されての負は心に省みる所あるべし。
若湊常陸山の人気ますます加わり、の勝は突きの一点にて、外せば必ずの勝とは衆評にてありし如く、は二度の突きにもは踏み耐えしより透かさずは左差しの右筈にて寄るも動かずして寄り返す出鼻をハタキたれど効かず、は左充分に差して寄りたるにはたちまち踏切っての勝は大喝采にてありたるが、もよく角力いてにも危うき所見えたり。
朝汐荒岩は当日の呼びものにて、観客は固唾を飲み二力士は水を飲んで清く立ち上がり、右の相四ツにて挑む間もなくは上手投を打ち、残るを寄っての勝は別に手練を施す隙なくして負けは案外なりし。
・(中入後)金山嶽ノ越は相角力にて、の左差しをは巻き左筈に当てて右に二の腕を取りて後手に防ぎしが、解れて突き合いはハタキて残りしがの体据わらぬ隙に押切りての勝は興あり。
松ノ風小天龍は、手先競り合いより手四ツ片手車にて暫し挑み、やがての左四ツにて腰投を見せたれど小天残して打返すを又残され、体の軽きに二本にて釣り身にアビセられ棄て身に行く間なく小天の負け。

前日に黒星を喫した横綱小錦が休場してしまいましたが、会場は大入りです。幕内を務めたこともある鉞り(まさかり)は幕下に下がりましたが元気に出場しています。きわどい相撲でしたが預かり。ビデオも取り直しも無いこの時代、物言いがつくとほぼ預かりということで収められてしまいます。実際には有利だった力士には内部的に白星扱いとして昇進や給金に影響したそうですが、この一番は「平」ということで両者互角の半星ずつです。常陸山は十両力士ながら7日間すべて幕内力士との対戦。ベテラン若湊との取組は若湊の活躍で動きのある良い相撲でしたが、最後は常陸山が寄り切り、これで7連勝。前頭上位や三役経験者も含め次々となぎ倒しています。止めるのは誰なのか・・・朝汐と荒岩は気鋭の大関vs関脇戦、ここは速攻がうまく行って大関が貫禄を示しました。

明治31年夏場所星取表

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【2013/01/21 23:38】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
明治31年夏場所六日目 (朝日新聞/明治31.5.21)

○回向院大相撲
・昨六日目は、前日二日間休場にて人気挫けしならんと思いのほか、好取組ありしため客足ことに繁く客止めの大入を占めたり。
浪花崎國見山は、突張っての勝は苦なし。
境嶽金山は、突き合いは右上手を巻きは左を差し、投げの打合いよりは左を一寸足癖を見せる途端、上手捻りにての勝。
成瀬川八剣は、幕下へ昇る頃の元気は何処へ去りしか、今日の取組片や不手練のなれば右差しにて釣りの勝なりしが、全体は劣りたり。
鬼竜山淡路洋、突合い突き落しての勝はの弱きにあらずの俄かに技量の進みしに依る。
嶽ノ越尼ヶ崎は、遮二無二突掛けしため流石のも取付く術なく、受けると防ぐとの間にの激しく突き出す鉄砲を寄られながらに手繰り、小手投げにて危うく勝を占しはたる所なり。
松ノ風は、出鼻をハタクをは泳ぎて懐に入り、二本を差したればは外枠にて渡し込まんとするよりは体を伸ばして下手より釣り身に行くを、は上手より左四ツの右上手を引き、釣出しての勝は大出来。
小天龍鳴門龍は、突合い左を差すやいな巻き落しての勝。
稲瀬川玉風は、左四つにて右筈にて二度押さんとせしまでにては仕掛けず土俵の中央に仁王立ちのまま水となり、のち右を入れ寄切らんと進むを、は外掛にてアビセ大乗掛にての勝は残念なりしならん。
不知火大纒は、立ち上がりかったり右の差し合いに挑み、の寄るを不知は腰投げを試みたれど、もさるもの残して押し切らんとすれば不知は廻り込みの体いまだ据らぬ間に右差しの左差しにて押切る不知の勝は如何にも巧者。
玉ノ井響升は当日別格の好取組、左四つの寄倒しにての務は記す程の価値なし。
小松山北海は左四つにて渡りは寄りつつ内無双にて乗り懸けるを小松危うくウッチャリしためは先に落ちたり。
狭布里若湊は、の突き手は激しくも耐える間もあらせず突き出しての勝は呆気なし。
大砲黒岩は以下の二番と共に当日の呼び物にて、両力士土俵の中央に充分に気を養いしが、は相手の強敵足を取るより他なしとの注文をも悟りて下を防ぐより容易に立たず待った数番にて立ち上り、懐に入らんと進む肩口を突かれて腰砕けの勝は前々よりの衆評と異ならず。
鳳鳳源氏山は、右四ツにて挑みつつより寄るをはすかさず左外掛にて一寸腰を砕きて逆投げを打ちて同体に流れしが、行司木村瀬平は同体なるもの仕掛けゆえに団扇を揚げしより、物言い付きて預りとなり、星は五分五分。
梅ノ谷小錦は満場の観客皆梅ノ谷梅ノ谷と連呼する程の好人気なれば、も用意周到互いにやや堅く見えしが、の突き手をハタキたれどは付け入るより、廻りながら又ハタキしも残れば左四つにて寄り進み、すでにに危うき所見えしが寄り返し、押切らんとするをは左外掛にて防ぎて相四つとなり、暫し挑みて水となりしかば観客はいづれも引分ならんと思い居りしに、間もなくまた揉み合いは呼吸を計りての寄る鼻を捻っての勝は大相撲にて満場割るるばかりの大喝采なりし。

出羽海常陸山
・当期大相撲の勘進元なる出羽海運右衛門は、酒を嗜むこと猩々の如く、酒とさえ名がつけば白馬でもなおしでも百川を吸い干すべき勢いの凄じきに、人あだ名してドブ六と称し、仲間内には其の異名の通用するほどなりしが、旧臘おもわぬ金の手に落ちて過度に飲酒しけるため、遂に卒倒して立つあたわずようやく医薬にて全快しけるなるが、この頃では「酒は借金の長」なりとて毫も杯に手を触れず、もし是れを勧むる者あれば慌てて手と首を振り眼を丸くして「怖くって飲めましねえ」と打ち笑う、また弟子の常陸山谷右衛門は先年東京を脱して名古屋へ赴き同地にて或る婆さんの男妾となりしが、それも女狂いの資金が欲しきよりなりしに、今度呼戻されてからは日の出の勢い、従って金も手に入る所から又放蕩して後戻りせねばいいがと贔屓客は心配して居るよし、されど当人は以前と違いこの頃は女の方から迎えに来て困るが行けば十円以上の散財だから先づやめだと言い居るとぞ、この心久しく続けば天晴なれと、或る好角家覚束なげに物語りぬ。

二日間ほど雨で順延しましたが、場所も後半に入り好取組があるため人気は上々です。十両勢も鬼竜山(きりゅうざん)、嶽ノ越(たけのこし)、稲瀬川(いなせがわ)ら明日の幕内を目指す勢力が元気な相撲を見せ、活気があったことでしょう。國見山(くにみやま)は将来の大関力士で、まだ幕下ですが力強い相撲を見せているようです。幕内では玉ノ井に響升、どの辺が別格の好取組なのか分かりかねます(;・ω・)玉ノ井が勝ちましたが面白い相撲ではなかったようです。張出関脇の大砲は黒岩を寄せつけず、ただ一人6連勝。横綱小錦は長い相撲となりましたが先場所に続いて梅ノ谷に苦杯を喫してしまいました。さて記事の方は当代の常陸山と先代常陸山の師弟コンビ、酒色を好んだことで有名な二人は最近控えているようですね。白馬=どぶろく、なおし=ミリンと焼酎を混ぜた安い酒のようです。この調子で精進していけるでしょうか。

明治31年夏場所星取表

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【2013/01/18 21:39】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
明治31年夏場所五日目 (朝日新聞/明治31.5.18)

○回向院大相撲
・昨十七日(五日目)は天気予報も面白からぬ兆候を示されたるが、人気力士の好取組多きため空模様を顧みず好角家は午前よりひしひしと詰掛け、特別席を除くの外は立錐の地なき好景気にてありし。
岩戸川嵐山は、の右差にて苦もなく押し切りの勝は岩戸近来技量の劣りしに依る。
高千穂甲岩は、の左を泉川に撓めしも効かず解かれて片閂に絞りしも、は右前袋を引きて放たぬより、は閂に懸けて絞るもは耐えて隙を計り、引落し旨く決まっての勝。
待乳山立嵐は左四ツに渡り合い暫し挑みしが、は大得意の三所詰めにての勝は今日が初めてなりし。
有明松ノ風は、の元気に反しは近頃愛せられ過ぎて力量の抜けし際なれば勝負如何と見る間に流石はの抜量、の諸筈を透かしたれど残りしよりハタキ込んでの勝ちは先づ狂いなし。
利根川淡路洋は、突合い突出しての勝は上出来。
谷ノ川緑川は、手先の競り合いより左筈にて押切りの勝は、少時立ち後れたるにもせよ余り脆し。
鳴門龍鶴ヶ濱は、前日の大手柄の矢先元気至ってよく立ち向いしが、の技量には未だ及ばざるかの左差しをは巻きつつ下手投げにての勝。
増田川天津風は、突き合いの一点にての激しく突掛けるを透かしたれば、の足流れて砂上に伏す。
大見崎一力は、突き合い叫びの声諸共大見の体は土俵外にありて相撲にならず。
大蛇潟不知火は、は左差しに右を当てれば不知は右を首に巻き倒さんとするも、は上よりアビセたれば不知火は支える力なく腰砕け敗を取る。
越ヶ嶽横車は、突合いは左四ツにて釣ると見えしが腰投げにての勝。
鬼ヶ谷當り矢は、に痛所ありて休。
千年川荒岩は、突き出しの勝は取らずとも知る。
朝汐梅ノ谷は、一月場所にて敗を取りし其の回復をせんとは念を入れ隙なく立ち上り、左四ツにて右前袋を引きて釣らんと寄り身に行くを、は焦立ち右上手にてミツを取らんとするも、振って取らせぬには勝手悪しく差し替え秘術を施さんとする間に、は満身の力にて釣り出しの勝は満場の大喝采暫し鳴りも鎮まらざりし。
小錦谷ノ音は、立ち上りの出鼻をは例の蛙掛にて巻きたるをも耐うれば、廻り込まれて見苦しき敗を取らんを慮りてアビセ掛けたればと同体に流れの方早く落ちたりとてに団扇を揚げたるより、物言い付きて預りとなり星は五分五分なれど、の方仕掛けたるが勝と見て可なり。
・(中入後)鬼竜山は左四ツ、は寄り切り勝を占む。
岩木野小天龍は、小天の左差しをは巻き左咽輪に懸け、小手掛を試みしが効かず、小天もまた出し投げに行くも効かぬよりは蹴返しを見しも又効かず、競り合ううち小天に痛所ありて引分となりしは中々の相撲にてありし。

十両で土付かずの松ノ風、人気に溺れているらしいですが(笑)力量はあるようで全勝キープ。同じく十両の鳴門龍は前日は前頭5枚目の越ヶ嶽を破って勢い付いていましたが新入幕の鶴ヶ濱に完敗、鶴ヶ濱は幕内初白星。先場所復帰した一力は気合相撲、復調してきたようで快勝でした。好取組は新大関朝汐と梅ノ谷の一戦、元気者同士でしたが若い梅ノ谷がマワシを取らせない技術も見せつつ豪快な吊りでの勝利でした。

明治31年夏場所星取表

東前頭10・増田川牛之助、東前頭11・北海大太郎

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【2013/01/15 20:52】 | 大相撲 | コメント(0) | page top↑
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